2009年11月17日 (火)

まさに「冤罪を証明」

足利事件の菅家さんは無実であるということを01年2月、世間に明らかにした単行本『幼稚園バス運転手は幼女を殺したか』(小林篤著、草思社)のことは知っていた。が、いままで読んだことはなかった。同書は『足利事件 冤罪を証明した一冊のこの本』(講談社文庫)と改題されこのほど文庫化。遅ればせながら読んだ。

著者の丹念な取材を基に書かれ、菅家さんがなぜ犯人とされたのか、その過程がよく理解できる。捜査関係者をはじめ、マスコミ(実は自分も)はどのように菅家さんを見ていたのかも。

読み進めているうちに、当時勤めていた新聞社の記事も登場しているのが見つかった。推定無罪ということを忘れ、犯人であることを前提にした記述で、とても恥ずかしく申し訳ない気持ちになるが、そのときはマスコミ全体が同じような受け止め方だった。デスクを務めていた先輩から最近、「きょう逮捕へ」と地元紙では唯一、見出しを打ったという経緯も聞いたが、結果的に菅家さんを冤罪被害者にする片棒を担いだマスコミも責任は重い。

《犯人だったら言えない決定的な言葉を発していた。菅家は、司法がDNA鑑定を盲信した一審段階から再鑑定を望んでいた》(『足利事件』)。この言葉を真摯に受け止めることができていたなら、17年半も菅家さんを苦しめることはなかったのかもしれない。

足利事件―冤罪を証明した一冊のこの本 (講談社文庫) Book 足利事件―冤罪を証明した一冊のこの本 (講談社文庫)

著者:小林 篤
販売元:講談社
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2009年10月10日 (土)

キセイチュウ~

「寄生虫」と聞いて、あまりいい印象はもたないと思う。人体にとって害だという意識が強い。ギョウ虫、サナダ虫、フィラリア・・・。

負のイメージばかりだった寄生虫も、意外に役に立つものだということを気づかせてくれたのImg_3999 が『寄生虫のひみつ』(藤田紘一郎著)。《寄生虫と人は、まさに太古の昔から絶妙のパートナーであった》という。

「アレルギーに寄生虫が効く?」なんて興味深い。自分も毎年悩まされている花粉症。その原因について《寄生虫がいなくなったこと》と指摘している。また、極端な清潔志向の日本人は海外でコレラに感染したりする。バリ島で日本人だけがコレラにかかるのは、腸内細菌の数が少なくなっていたので発症するらしい。

マッチ箱に大便を入れて学校に持って行ったり、おしりに当てた青いセロファンテープを持って行くという経験をもつオジサン世代。これからは寄生虫への見方を少し変えたい。

寄生虫のひみつ ムズムズするけど見てみたい「はらのむし」たちの世界 (サイエンス・アイ新書) Book 寄生虫のひみつ ムズムズするけど見てみたい「はらのむし」たちの世界 (サイエンス・アイ新書)

著者:藤田 紘一郎
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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2009年9月20日 (日)

80年代がよみがえる

読んでいくうちに、頭の中は30年前に戻っている。FMエアチェック、やりました! サンヨーのラジカセMR-U4も持っていました(家の隣がサンヨーの専門店coldsweats01)。

『FM雑誌と僕らの80年代“FMステーション”青春記』(恩藏茂著)を読むと、自分の青春時代もよみがえってくる。著者は元『FMステーション』編集長。FM放送の始まりから、雑誌の創刊、音楽メディアの変ぼうなどが生き生きとした文章でつづられている(ちなみに自分は『FMレコパル』の愛読者でした)。

いまでもほぼ毎日、FMラジオ放送は聴いている。でも、当時のようにカセットテープに音楽を録音するということはしていない。欲しい楽曲があれば、携帯の着うたフルでダウンロード。ずいぶんと生活スタイルが変わったものだ。

レコードの時代、大好きなクイーンのLPをかけて歌詞カードを目で追い、一緒に歌っていたcoldsweats01。いまより1曲、1曲を丁寧に聴いていたように思う。エアチェックのFMも。しかし《ラジオがいまだに重要な音楽メディアの一つであることはたしか》。同感。

FM雑誌と僕らの80年代--『FMステーション』青春記 Book FM雑誌と僕らの80年代--『FMステーション』青春記

著者:恩蔵 茂
販売元:河出書房新社
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2009年9月 8日 (火)

頑張れEnnrico!

実は、先の衆院選で初当選した福田衣里子さんのファンだ。薬害C型肝炎訴訟の原告としてメディアに登場したときから、気になっていた。

福田さんが著した本があることを知り、読んでみた。『It's now or never 私は早く、C型肝炎とさよならしたい!』。父の仕事の都合でロンドンに住んでいた子供のころ、高校時代に空手部に所属していたことなどがユーモアあふれる軽妙な文章でつづられている。

19歳のときのヨーロッパ一人旅。スペイン、アルハンブラ宮殿帰りに若者に襲撃された話。《この時だけは、守られてる人たちが羨ましかった。孤独を感じた》という。人生へ悩み続けた10代。

20歳、C型肝炎に感染していると知ってからの闘いが、やはり圧巻だ。《全国のすべての肝炎患者の救済を求め、今闘う。真実を求めて、今闘う。2度と、薬害が生まれませんように》。彼女の生き方に共感できる人は多いと思う。

It’s now or never―私は早く、C型肝炎とさよならしたい! Book It’s now or never―私は早く、C型肝炎とさよならしたい!

著者:福田 衣里子
販売元:書肆侃侃房
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2009年9月 3日 (木)

罠、冤罪・・・嫌だ

足利事件について思い出すと・・・。当時、新聞各紙は容疑者逮捕の決め手となったDNA鑑定は「100万人から1人を絞り込む能力」(朝日新聞)などと礼賛記事ばかりだった。すごい、間違いなく特定できるんだ、と記者のはしくれだった自分も思い込んでいた。

ところが、絶対と思わされ続けてきたDNA鑑定自体が誤りで、無期懲役となり服役していた菅家利和さんが無罪となった。菅家さんを長年支えてきた西巻糸子さんから支援グループの会報がずっと(現在も)送られてきていたので、足利事件は冤罪だという状況は知っていた。が、何の力にもなれなかった自分が恥ずかしい。

取材を担当していた記者の机の上に、捜査員たちが河川敷で手を合わせている姿を写した写真が置いてあったのを覚えている。死体が発見された現場だ。その後、警察署長となった知り合いの警察官もいたので、そのモノクロ写真は記憶に残っている。記者も夜討ち朝駆けをし、捜査員と“一体”となって犯罪報道をしていた。

両親の死に目にも会えなかった菅家さん。「無実の私がどうしてこんな目に遭わなければならないのでしょうか」「私が失った17年半を返してほしい」。《科警研・警察・検察・裁判所の“犯罪”のすべてを告発する!》として緊急出版された『訊問の罠-足利事件の真実』は、足利事件にかかわった人はもちろん、無実の人が捕まるわけがない、自分とは無関係だと思っている人、すべてに一読を勧めたい。

訊問の罠  ――足利事件の真実 (角川oneテーマ21 A 104) Book 訊問の罠 ――足利事件の真実 (角川oneテーマ21 A 104)

著者:佐藤 博史,菅家 利和
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
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2009年8月27日 (木)

そのとおりだと思います

タイトルにひかれて手にした本。『ウェブはバカと暇人のもの』(中川淳一郎著)がそれ。

インターネットを「普通の人」「バカ」がどう利用しているか、分かりやすく解説している。「怒りの代理人」がたたきがいのある人を見つけ出し、みんなでたたく“いじめ”。自分が直接被害に遭ったわけではないのに、非難の書き込みをする、といった指摘は「そうだよなあ」。

「さんまやSMAPは、たぶんブログをやらない」では、なるほどと理解。「ブログ、SNSの内容は“一般人のどうでもいい日常”」は、たしかに《昼ごはんに何を食べただの、ネイルサロンに行っただの、観たテレビ番組の感想だったり、総理大臣への文句》などは多い。《見知らぬ他人にとっては正直、知っていても知らなくてもどうでもいい情報だらけ》。

第5章「ネットはあなたの人生をなにも変えない」でネットへの過剰な思いに対し、それは《幻想である》と断言。《ヤフーを筆頭とするメガサイトの圧倒的集客力と、グーグルによる検索結果に従うことにより、ネットは人々をより均一化した》というのは鋭い。

Imagineじゃなかった、こうしてブログを更新している自分も「暇人」の一人。「どうでもいい情報」を流しているcoldsweats01

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書) Book ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

著者:中川淳一郎
販売元:光文社
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2009年7月23日 (木)

差別する社会って

自分も「差別」という心が全くないわけではない。小学生のころ、クラスの男の子の家が粗末でぽつんと1軒だけ建っていたため、「1軒家、1軒家」といってばかにしていた。どもりのある子に対しても、どこか高圧的だったthink

『差別と日本人』(野中広務、辛淑玉著)を読んだ。辛さんとは講演を聴いたり、お会いしたことがあるが、野中さんについては自民党の大物政治家というぐらいの認識しかなかった。国家公安委員長だったとき、松本サリン事件の被害者、河野義行さんに謝罪したことは知っていたが。

部落差別についても書かれている。《部落差別とは、「部落」というレッテルを貼り、差別することである》《差別は、いわば暗黙の快楽》だという(辛さん)。ようやく衆議院を解散した麻生太郎氏は、総理になる前の01年3月12日に開かれたある会合で、「野中やらAやらBは部落の人間だ。だからあんなのが総理になってどうするんだい。ワッハッハッハ」と笑っていたという。

子供のころ、近所に在日朝鮮人の男性が住んでいた。雑貨店を営んでいたわが家に酔って訪れ、陳列棚にある商品をなぎ払って落としたりして怖かった記憶がある。酔って暴れるのはだれであろうといいことではないが、いま思えばあの男性は日本社会で受ける差別によるストレスを酒で発散させていたのかもしれない。

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100) Book 差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

著者:辛 淑玉,野中 広務
販売元:角川グループパブリッシング
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2009年6月16日 (火)

だれもが冤罪被害者に

最近注目されたのは、足利事件で無期懲役刑にされた菅家利和さん。無罪が確実となったいま、だれもが認める明らかな冤罪被害者だ。雑誌『冤罪File』などを読むと、このほかにもたくさんの冤罪があることが分かる。

ふだんの生活、たとえば通勤中、電車の中でいつ痴漢に間違われるかもしれない。どうして冤罪事件が起きるのか、《さらに、冤罪被害者にならないよう自分で自分の身を守る術》などについて書かれているのが『「この人、痴漢!」と言われたら 冤罪はある日突然あなたを襲う』(粟野仁雄著)。

いまも起きている冤罪事件の数々、具体的な事例を読むと暗たんたる気持ちになる。自分には関係ない、とは言えない世の中なのが怖い。冤罪を生み出す警察、検察、裁判官、弁護士、メディアそれぞれの問題について検証し詳しく書かれている。

自分は絶対に廃止すべきだと思っている裁判員制度で「冤罪は防げるか」という章もあり、大変興味深い。“疑わしきは罰せず”“推定無罪”といった原則が生かされ、冤罪被害者を出さない、そのためにはどうしたらよいか、考えさせられる書だ。

「この人、痴漢!」と言われたら―冤罪はある日突然あなたを襲う (中公新書ラクレ) Book 「この人、痴漢!」と言われたら―冤罪はある日突然あなたを襲う (中公新書ラクレ)

著者:粟野 仁雄
販売元:中央公論新社
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2009年6月 4日 (木)

読んでもらえるように

何年書いても満足、納得のいく文章はできない。このブログにしても「読ませる」ものになっているか、と考えてみると全然なっていないだろうなあcoldsweats01

何かしらヒント、物書きのコツを求めて関連本bookを読んだりする。最近ではタイトルもズバリ『読ませるブログ 心をつかむ文章術』(樋口裕一著)を読んでみた。

「読ませる文章」に仕上げる3つの条件、「一味違うブログ」にするための心構え、ブログ全体のテーマの探し方-などなど、自分でもうまく書けそうな気にさせてくれる。“読者を引きつける文章テクニック”についてもあり、大いに参考になる内容だ。

9月でまる3年を迎える当ブログ。“継続は力なり”、かな。《長く続けるうちに、書く力がつくだけでなく、人生を味わう能力が高まっていく》という著者の言葉を信じ、これからも気楽に続けていこう。

読ませるブログ (ベスト新書) Book 読ませるブログ (ベスト新書)

著者:樋口 裕一
販売元:ベストセラーズ
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2009年5月26日 (火)

ぼくと“1円”の神様

読後感がいまの新緑の季節のように、実にさわやか。アカデミー賞の作品賞をはじめ、監督賞、脚色賞など最多8部門受賞の映画『スラムドッグ$ミリオネア』。その原作『ぼくと1ルピーの神様』(原題『Q and A』)は、久しぶりに読んでよかったと思える作品だ。

主人公ラム・ムハンマド・トーマスがテレビのクイズ番組tvで全問正解、史上最高額の賞金10Img_3023_2 億ルピーを手に入れるcrown。ちなみに1ルピーは2.19円(25日現在)。日本円にして20億円を超える巨額を、孤児で教養のない少年が獲得する夢のような話。

常識的に考えれば難問を解くのは無理に思える。しかし、ラムのつらくて悲しいさまざまな体験が偶然にもクイズの答えと結びついていた。スラム街での生活、殺人、幼児虐待・・・。なぜ正しい答えを知っていたのか。それを解き明かす、彼が語る歩んできた人生に引き込まれてしまう。

ずっと肌身離さず持っていた幸運の1ルピー硬貨。最後に海に捨ててしまい「もう必要ないからさ。運は自分が作り出すものだってわかったんだ」というラムの言葉がニクイ。自分にも“1円の神様”はいないだろうかcoldsweats01

ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫) Book ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)

著者:ヴィカス スワラップ
販売元:ランダムハウス講談社
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